こんにちは。
グリーンコーディネーターの大川です。
明日から12月!町の中も年末の空気になってきましたね。
今日はクリスマス装飾に欠かせないポインセチアについてお話ししたいと思います。
「ポインセチアって…なんだっけ?」というあなたも、
「あ、あのクリスマスの花ね」と納得してもらえるはず。
実は、このポインセチアは赤道から近く温暖な、メキシコから中央アメリカの原産です。
つまり、寒さにはかなり弱いんですね。
ではその花がなぜ、クリスマスの象徴になったのでしょうか?
話は古代アステカ文明まで(!)さかのぼります。
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古代アステカの人々はポインセチア(アステカ語では『クエトラソチトル』)を重要な植物とみなし、王宮や神殿の装飾に使っていました。
16世紀の始めごろ、アステカ帝国はスペインに滅ぼされ、フランシスコ会によるキリスト教化が始まります。
このとき、修道士たちはメキシコでちょうどクリスマスのころに咲く「赤い花」を、もともとのアステカの儀式と、キリスト教の橋渡しをするシンボルとして使いました。
のちのポインセチアが、クリスマスの花とみなされた瞬間です。しかし、このときにはまだ、メキシコ国外へ「赤い花」が運び出されることはありませんでした。
1828年、アメリカ合衆国の外交官としてメキシコに赴任していた、ジョエル・ロバーツ・ポインセット氏が、メキシコ南部の旅の途中で「鮮やかな赤い苞を持つ」植物を見い出します。この花はエディンバラの植物園に運ばれ、徐々に改良がなされます。いつしか花はポインセット氏の功績をたたえ、「ポインセチア」と呼ばれるようになります。
1920年代にはカリフォルニアで商業的栽培が始まった記録があり、その後のクリスマス商戦でのマーケティングがヒットしたことによって、ポインセチアは一気にアメリカ全土へと広まったのです。
さて、ここで注目したいのは、ポインセチアがメキシコでもアメリカ本土でも「クリスマスの頃」開花するところです。
これはポインセチアが短日性植物、つまり昼の長さが短くなってくると赤く色づき始める習性によります。
寒さに弱いこともあり、ポインセチアはアメリカでは温室の中で暗幕を張り、暗い時間を長くとって開花させられました。これは今でも変わっておらず、たとえば家庭で何年かにわたってポインセチアを育てる場合、夏の終わりごろから箱などをかぶせて暗くしないと、花は赤くなりません(!)
現在ではアメリカはもちろん、もともとの原産地であるメキシコでも、遺伝資源および生物資源権利の尊重の観点から、新品種の開発が始まっています。
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だいぶ長くなってしまいましたが、ポインセチアがクリスマスの花になるまでには、世界史の中でのドラマティックな動きがあったんですね。
ポインセチアが辿ってきた道のりを想像しながら花を眺めるのも、とってもステキだと思います。
参考文献:”観葉植物の文化誌”、マイク・マウンダー著、原書房(2022年)